最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)707号 判決 1968年10月29日
上告人
加藤淳
代理人
村上秀一
復代理人
長島朋次
被上告人
加藤豊正
代理人
原田武彦
高橋淳
主文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
右部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人村上秀一の上告理由第四点について。
本件記録によれば、上告人は第一審以来、本件従前の土地につき被上告人主張の売買契約が成立したとしても、当時右土地は畑であつたところ、右売買は農地法上必要な条件を完備していないから無効である旨主張していたことが明らかである。しかるに、原審は、右土地につき売買契約が成立したことを認定したに止まり、当時右土地が農地であつたかどうかにつき明確な判断を示さず、したがつて、上告人の前示主張についてもなんら判断を示すところがない。
ところで、農地またはその持分の譲渡は、知事の許可をえなければ効力を生じないことは、当時施行の農地調整法四条の規定上明らかである。しかるに、右土地の売買において知事の許可の有無についてなんらふれないで、売主たる上告人は買主たる被上告人に無条件に右土地の所有権移転登記をすべきであるとした原判決には、審理不尽、釈明権不行使、ひいては理由不備の違法があるといわなければならない。論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴の部分は、すべてこの点において破棄を免れない。
よつて、本件売買により被上告人が従前の土地について共有持分三分の二の所有権を取得したことを理由として上告人に対し右所有権の移転登記を求める部分について更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美)